FBARの対象者は?
FBAR(Foreign Bank and Financial Accounts Report、FinCEN Form 114)とは、Bank Secrecy Act(銀行秘密法)の下、外国金融機関で資産を隠蔽したり、マネーロンダリングを防ぐために、FBARの対象者は毎年、アメリカ財務省(Department of the Treasury)へ外国資産を開示しなくてはいけません。この報告書はIRSではなく、アメリカ財務省へ申告します。
FBARの申告を怠った場合は罰金が課せられることもありますので注意が必要です。
FBAR申告が必要な人
あなたがアメリカ市民、永住者、税務上居住者、コーポレーション、パートナーシップ、LLC、エステート、トラストで、下記1、2両方に該当する場合は、FBAR申告の対象者となります。対象金融機関口座は、外国金融口座(アメリカ銀行の外国支店口座含む)、証券口座、投資信託口座、生命保険口座が対象となります。現在のところ仮想通貨口座は申告の対象となっていません。
夫婦の場合、配偶者がアメリカ市民や居住者で、もう一方の配偶者が非居住者の場合は、アメリカ市民と居住者はFBAR申告対象となりますが、非居住者の配偶者は申告対象外となります。
- 米国外に1つ以上の金融口座の所有権、または口座の署名権限がある。
- 1月から12月の間で全てのアメリカ以外の金融口座の資産合計が10,000ドル超えた場合。
例:外国金融資産口座を2つ持っていて、1つの残高が4,000ドル、もう1つの残高が7,000ドルの場合は合計10,000ドルを超えますので、両方の口座情報を申告する必要があります。
例:アメリカ居住者が非居住者から、贈与として日本の銀行口座にて10,000 ドルを超える金額を受け取った場合、4月15日 (または延長の場合は10月15日) までにFinCEN Form 114(FBAR)を別途申告する必要があります。さらに多くの金額が預金口座に入金された場合はForm 8938(FATCA)の申告も必要になってきます。
申告日
FBARの申告日は、一般の確定申告日と同じく4月15日となり、1年に1回の申告となります。もし申告日に間に合わなかった場合は6ヶ月間の自動延長が認められ、申告日は10月15日となります。延長申請手続きは必要ありません。
必要情報
- 口座所有者名
- 口座番号
- 口座の種類(普通、定期など)
- 金融機関名と住所
- 年間最高残高額
FBARの罰金はいくら?
FBAR の提出が遅れたり、または全く提出していない場合は違反となるため、下記罰則の対象となる可能性があります。
- 故意はでなく、申請を怠った場合の罰金は、最大で12,921ドルとなります。
- 故意に申請を怠った場合は、 129,210ドル、または米国外金融資産額の50%のどちらか多い方となります。
FBARを提出する必要があったが、知らなくて提出していなかった場合は?
FBARの申告義務が発生していたが申請していなかった場合、まずはパニックにならずに一度落ち着いてください。IRS はStreamlined Filing Compliance Proceduresと呼ばれる手続きを提供しており、罰則なし、または罰金を軽減して 過去のFBARの申請を行うことができます。
あるいは、確定申告書(未報告の所得を含む)に実質的な変更を加える必要がない場合は、Delinquent FBAR Submission Proceduresという手続きの対象となる可能性があります。 このプログラムは通常、未報告の収入がなく、FBAR に加えて他の延滞フォームを提出する必要がない納税者に限定されています。
Streamlined Filing Compliance Procedures
Streamlined Filing Compliance Proceduresには下記2つの手続き方法があります。
- Streamlined Foreign Offshore Procedures
この手続きの最も魅力的な点は、資格のある米国外に居住している納税者(年間330日以上)は、「罰則なし」で過去のFBARを申請できることです。 - Streamlined Domestic Offshore Procedures
この手続きは、米国に居住する納税者が対象となる場合があります。 ただし、報告されていない外国の金融資産には 5% のペナルティがあります。
5%のペナルティは、複数年ある未報告のFBARの中から一番高い残高(12月31日時点)を選んで、その額に5%を掛けて算出します。例:6年間FBARを申告していなかった場合、過去6年間のうち2020年度の残高が一番高く、100,000ドルあったとします。ペナルティは100,000 X 0.05 = 5,000ドルとなります。
条件
Streamlined Filing Compliance Proceduresを行うには、申請していなかったという事実が故意でないこと、またはIRSから民事、刑事の調査に着手されていないことが条件となります。納税者は、証明書で「故意でない」行為の理由と事実を提供する必要があります。
「故意でない」とは、以下の理由による行為と定義されます。
- 過失
- 不注意
- 間違い
- 法律の誤解による善意な行為
Streamlined Filing Compliance Proceduresの条件をクリアした場合、下記を行う必要があります。
- 過去 3 年間の未提出、または修正確定申告書を提出します。
- 過去 6 年間の未提出のFBAR (FinCEN フォーム 114) を提出します。
- 確定申告書と FBAR を提出しなかった理由を詳述した説明書を完成させます。
- 必要に応じて過去 3 年間の税金(利子所得がある場合など)と利息を支払います。
通常、未払いの税金には、当初の申告書の期日から支払い日までの期間、利息が課されます。未払いの連邦税の利率は、3 か月ごとに決定され、掲示されます。 これは、連邦短期金利に 3% を加えたものです。 利息は毎日複利計算されます。
FBARとFATCAの違い
国際税務に関する報告書の中で、最も知られているフォームはFBARになります。ただし、その他にもFATCA、Form 3520などの申告が必要な国際税務報告書があります。
FATCA (Foreign Account Tax Compliance Act) とは、外国資産隠蔽による脱税を防ぐため、外国金融資産情報を申告するための法律です。FBARに加え、FATCA申告対象者はForm 8938という申告書をIRSへ提出します。申請を怠った場合は罰金が発生します。
FATCA申告が必要な人
アメリカの納税者(市民、永住者、居住者、および特定の非居住者)で、下記の規定の外国金融資産額を満たしている場合は申告の必要があります。
- 米国居住の納税者
米国居住の納税者 | 課税年度最終日 | 年間 |
独身の納税者 | 50,000ドル | 75,000ドル |
夫婦合算の納税者 | 100,000ドル | 150,000ドル |
夫婦別の納税者 | 50,000ドル | 75,000ドル |
- 独身の納税者の場合、特定の外国金融資産の総額が、課税年度の最終日に50,000ドルを超えているか、年間を通じて一度でも75,000ドルを超えた場合は申告対象となります。
- 夫婦合算申告をする納税者の場合、特定の外国金融資産の総額が、課税年度の最終日に10万ドルを超えているか、年間を通じて一度でも15万ドルを超えた場合は申告対象となります。
- 夫婦別申告をする納税者の場合、特定の外国金融資産の総額が、課税年度の最終日に50,000ドルを超えているか、年間を通じて一度でも75,000ドルを超えた場合は申告対象となります。
- 外国に居住している納税者の場合
外国に居住している納税者の場合 | 課税年度最終日 | 年間 |
夫婦合算の納税者 | 400,000ドル | 600,000ドル |
夫婦合算以外の納税者 | 200,000ドル | 300,000ドル |
- 夫婦合算申告をする納税者の場合、特定の外国金融資産の総額が、課税年度の最終日に40万ドルを超えているか、年間を通じて一度でも60万ドルを超えた場合は申告対象となります。1人の配偶者のみが外国に居住している場合でも適用されます。夫婦全ての金融資産をForm8938に記載し提出します。
- 夫婦合算申告をしない納税者は、外国金融資産の総額が課税年度の最終日に20万ドルを超えているか、年間を通じて一度でも30万ドルを超えた場合は申告対象となります。
FBARと混同しないように注意してください。FBARを申請すれば、FATCAは申請しなくても良いというわけではありません。FATCAの申請が必要な場合は、FBARの条件も満たすため申請する必要があります。また、申請先が異なり、FBARは財務省へ、FATCAはIRSへ申請します。
もし連邦所得税確定申告が不要な場合は、仮にFATCAに該当していてもForm8938の提出は不要となります。
罰金
申告日を過ぎて申請した場合の罰金は10,000ドルとなります。また支払いが30日遅れるごとに、罰金額が最大50,000ドルまで上がります。
申請日
所得税申告書Form1040と同じく4月15日が申告日で、Form1040と一緒に申請します。
延長した場合は10月15日が期限となります。
まとめ
アメリカ外の金融資産の報告を見落とす納税者が多々いますが、単純に申告を怠った場合でも不意に罰金が課せられる可能性があるため注意が必要です。毎年、対象となる海外金融資産がある場合は、FBARの申告を忘れずに行ってください。
さらに、多くの海外金融資産がある場合はFATCA申告の対象となる可能性もあります。FBARとFATCAの違いをしっかり理解し、申告漏れを防ぎましょう。両方とも海外金融資産の情報を報告するのみで資産自体に課税されることはありません。ただし、その資産から利子、配当所得を受け取った場合は課税対象となるため申告、及び納税義務が発生します。
過去のFBAR、FATCAの申請を「故意でなく」怠った場合は、IRSは救済手続きを提供してます。申請をしていない場合は、IRSから調査が入る前に救済手続きを利用して、速やかに申請を行ってください。
FBAR、FATCAに関するお問い合わせはメールで24時間受け付けております。お気軽にどうぞ連絡ください。
お気軽にお問い合わせください。080-2557-2592日本時間 9:00-18:00 [ 土日・祝日除く ] 米国電話番号 +1-310-697-2664 東海岸時間9:00-18:00 [ 土日・祝日除く ]
お問い合わせ
“FBARの対象者は?” に対して1件のコメントがあります。