【2025年施行】米国税制改正「OBBBA」徹底解説:基礎控除の恒久化からチップ・残業代の控除まで

2025年7月4日、米国の新たな税制改正法案「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」が成立しました。
この法律は、2017年のトランプ減税(TCJA)で導入された一時的な措置の多くを恒久化するだけでなく、子育て世帯やシニア層、さらにはチップや残業代で働く労働者に向けた画期的な新規定を盛り込んでいます。
本記事では、米国税務のプロが、2025年度の確定申告から影響を受ける主要な変更ポイントを分かりやすく解説します。
基礎控除(Standard Deduction)の恒久化と増額

最大の注目点は、2025年以降に失効予定だった基礎控除の増額が「恒久化」されたことです。さらに、2025年度からは以下の通り控除額が引き上げられます。
| 申告ステータス | 2025年度 基礎控除(Standard Deduction) |
| 夫婦合算申告 / 生存配偶者 | $31,500 |
| 世帯主申告 | $23,625 |
| 独身 / 夫婦別申告 | $15,750 |
基礎控除額は、2025 年以降の年はインフレ率に合わせて調整されます。
州税および地方税(SALT)控除額の大幅引き上げ

これまで$10,000に制限されていた州税・地方税控除(SALT Deduction)が、2025年から一時的に$40,000まで引き上げられます。
- 2025年: $40,000
- 2026年: $40,400
- 2027年〜2029年: 前年度の101%(段階的に増額)
- 2030年: 再び $10,000 に戻る予定
注意: 調整後総所得(MAGI)が$500,000(夫婦個別申告は$250,000)を超える高所得者の場合、この控除額は段階的に削減されます。
高税率州(カリフォルニア州、ニューヨーク州など)にお住まいの方にとって、
この変更は税負担に大きな影響を与える可能性があります。
シニア層・子育て世帯への新たな支援

シニア控除(Senior Deduction)の創設
2025年から2028年までの期間限定で、65歳以上の納税者一人につき$6,000の特別控除が認められます(夫婦共に65歳以上なら$12,000)。
- 所得制限:MAGIが$75,000(合算申告は$150,000)を超える場合、超過分の6%が控除額から差し引かれます。
児童税額控除(Child Tax Credit)の強化
2017年の税制改正(TCJA)による控除増額(1子につき$2,000)は2025年末で失効し、2026年には$1,000に減額される予定でした。OBBBAはこの失効を防ぎ、控除を恒久化した上で、さらに増額しました。
- 2025年度: 1子につき最大 $2,200 に増額。
- 2026年度以降: この$2,200をベースとして、毎年インフレに応じて自動調整されます(100ドル単位で切り捨て調整)。
- 還付可能額(ACTC): 税金支払額がなくても戻ってくる「還付可能分」についても、2025年は最大 $1,700 となり、以降はインフレ連動で恒久化されます。
Trump Accounts(子ども向けIRA)制度
2026年7月4日以降に拠出が可能となる新制度「Trump Account」とは、「OBBBA法」によって設立された新しいタイプの子ども向けIRAです。これは18歳未満の子どもを対象とした新しいIRAです。
対象と開設条件 ・親または保護者が選択し、18歳未満の子ども名義で開設 ・制度開始は 2026年7月4日以降
政府からの1,000ドル拠出 ・2025/1/1〜2028/12/31生まれの米国市民は、一度限り 1,000ドルの政府拠出を受けられるパイロットプログラムの対象 ・開設(選択)手続きが行われることが条件
その他の拠出ルール ・一般の個人による年間拠出は 合計5,000ドルまで ・雇用主拠出:年間 2,500ドルまで非課税(上記5,000ドル枠に含まれる) ・政府機関・チャリティ団体による寄付も一定条件で可能 ・いずれも2027年以降インフレ調整あり
投資と運用 ・S&P500など米国株指数に連動する投信・ETFのみ投資可能 ・アメリカ株式中心の長期運用を前提とした仕組み
引き出しと税務ルール ・原則として、子どもが18歳になる年の1月1日まで引き出し不可 ・18歳以降は一般のTraditional IRAと同じ扱いに移行
労働者に嬉しい「チップ」と「残業代」の所得控除

OBBBAの大きな特徴は、特定の労働所得に対して新たな控除を設けた点です。2025年から2028年までの時限措置として導入された「チップ控除」と「残業代控除」は、サービス業や製造業などで働く労働者の手取り額を直接的に増やすことを目的としています。しかし、その適用ルールは非常に細かく、正確な理解が必要です。
チップ控除(Tax on Tips)の詳細:
これまで全額が課税対象だったチップ収入に対し、最大$25,000までの所得控除が認められます。
- 適用の仕組み: 項目別控除(Itemized Deductions)を選択する納税者だけでなく、基礎控除(Standard Deduction)を利用する納税者も対象となります。
- 所得制限(フェーズアウト):MAGI(調整後総所得)が$150,000(夫婦合算は$300,000)を超えると、超過額$1,000につき$100の割合で控除額が減額されます。
- 「適格なチップ」の定義:
- 2024年12月31日時点で、通常チップを受け取る職業であること。
- 支払者が自発的に支払ったものであること(強制的なサービス料や交渉によるものは不可)。
- 雇用主から提供される「支払明細」にチップ額と受取人の職業が明記されている必要があります。
【注意点】給与税(Payroll Taxes)は免除されない
この控除はあくまで「所得税」の計算におけるものです。ソーシャルセキュリティ税やメディケア税などの給与税は、これまで通りチップ全額に対して発生します。
残業代控除(Tax on Overtime)の詳細:
週40時間を超えて働く非免除(Non-exempt)従業員に対し、残業代の一部を所得から控除できる制度です。
- 控除の限度額: 最大$12,500(夫婦合算は$25,000)まで。
- 対象となる「残業代」の範囲: 公正労働基準法(FLSA)に基づき支払われる、通常の賃金の「1.5倍」のうち、上乗せ分である「0.5倍」の部分のみが控除対象となります。
- 複雑な事務手続き: この制度の導入により、納税者は単に「いくら稼いだか」だけでなく、「何時間残業したか」という情報を税務当局(IRS)に報告する必要が出てくる可能性があります。雇用主側にとっても、給与計算システムの改修や詳細な労働時間の報告が求められる大きな負担増となることが予想されます。
マイカーローン金利の控除(期間限定)

2025年から2028年まで、個人利用目的で購入した自動車ローンの金利を、最大$10,000まで控除できます。米国製新車の購入や買い替えを検討している方は、今後の税務上の取扱いとして注目すべき制度といえるでしょう。
控除が認められる主な条件
以下のすべてを満たす必要があります。
- 2025年以降に契約した自動車ローンであること
- 米国内で最終組立(Final Assembly)された新車であること
- 個人利用目的で購入した車両であること
控除額と適用方法
- 控除できるのは自動車ローンの利息部分のみ
- 年間の控除上限:10,000ドル
- 標準控除を選択している場合でも適用可能
- 項目別控除を行っている場合も適用可能
クリーンエネルギー車両クレジットの廃止

一方で、電気自動車(EV)等への税額控除(最大$7,500)は、2025年9月30日以降の購入分から廃止されます。購入を検討されている方は、期限に注意が必要です。
従来、この税額控除は Inflation Reduction Act(IRA)に基づき 2032年まで継続 する予定でしたが、OBBBA により 大幅に前倒しで廃止 されることになりました。
終了となるクレジットの範囲
以下の税額控除は、2025年9月30日以降に取得した車両には適用されません。
- 新車のクリーン車両クレジット(EV・燃料電池車など)
- 中古クリーン車両クレジット
- 商業用クリーン車両クレジット
つまり、電気自動車(EV)・プラグインハイブリッド・燃料電池車など、すべての既存クリーン車両クレジットが事実上廃止されます。
ビジネス向け:ボーナス減価償却の100%復活

企業や個人事業主にとって朗報なのが、ボーナス減価償却(Bonus Depreciation)の100%適用の復活です。 2025年1月19日以降に取得・供用開始された20年耐用年数以下の資産などが対象となります。これは、企業が設備投資などを行った際、その取得費用を投資した年に全額経費として差し引ける仕組みです。
これまでの背景:段階的な縮小からの転換
かつての税制(TCJA)では、この100%ボーナス減価償却は2022年までの時限措置でした。2023年以降は毎年20%ずつ控除率が引き下げられ、2026年末には完全に廃止される予定となっていました。今回の改正は、この「期限切れ」を食い止め、制度を恒久的なものにするという大きな転換点となります。
なぜ「恒久化」が重要なのか?
今回の措置が税制の大きな改善とされる理由は、主に以下の3点に集約されます。
- 投資へのペナルティ排除: 通常の減価償却では、投資費用を数年〜数十年にわたって分割で経費化します。しかし、インフレや資金の効率を考えると、費用の回収が遅れることは企業にとって実質的な「投資へのペナルティ」となります。即時償却は、この負担を解消します。
- ビジネスの確実性と簡素化: 制度が恒久化されることで、企業は将来の税負担を予測しやすくなり、長期的な投資計画が立てやすくなります。また、複雑な償却計算の負担が減り、税務処理の簡素化にもつながります。
- 持続的な経済成長の促進 投資コストを即座に回収できる環境を整えることで、企業の設備投資意欲を継続的に刺激し、長長期的な経済成長を支える強力なエンジンとなります。
まとめ:2025年のタックスプランニングを早めに!
OBBBAの施行により、2025年度の税金計算は例年以上に複雑かつ、大きな節税チャンスが生まれています。特に高所得者層や自営業、チップを受け取る職種の方は、今から準備を始めることが重要です。
「自分の場合はいくら控除される?」「新制度を適用するための条件は?」など、詳細なシミュレーションが必要な場合は、お気軽に当事務所までご相談ください。
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