アメリカ401(k)の仕組みは?
401(k)は、多くのアメリカの雇用主が提供する企業型確定拠出年金制度であり、加入者(従業員)には税制上のメリットがあります。
加入した従業員は、給与から一定の割合を401(k)の口座に拠出することになります。 雇用主は、その拠出額の一部または全てを追加で拠出することができます。ほとんどの雇用主は従業員の拠出額の一定の割合(平均4.3%)をベネフィットとして拠出してくれます。(加入の際は雇用主側の拠出額を確認してください。)
従業員は、幅広い金融商品、株式、債券、投資信託等へ投資をすることできます。
雇用主が提供していない場合は401(k)へ加入することができませんが、代わりにIRA(個人型確定拠出型年金制度)へ加入することができます。条件を満たせば両方の口座へ拠出することも可能です。
401(k)の制度
401(k)には主に2つのオプションがあり、それぞれ明確な税制上のメリットがあります。
- Traditonal 401(k)は、従業員の総所得から拠出金が差し引かれます。つまり、従業員の課税所得はその拠出金額だけ減額され、その年の所得控除として報告できます。 一般的に従業員が退職後、口座からお金を引き出すまで、拠出により運用した投資利益には税金はかかりません。ただし、引き出したお金は課税所得対象となります。
- Roth 401(k)は、従業員は拠出金に対してすでにに所得税を支払っているため所得控除の対象にはなりません。従業員の総所得から税引き後に拠出金が差し引かれます。 しかし、退職後お金が引き出した場合は非課税となります。また拠出により運用した投資利益には税金はかかりません。
年間拠出制限
従業員が拠出できる限度額(雇用者の拠出は含みません。)
- 2023年、年間従業員1人の拠出額は最大22,500ドル。あなたが50歳以上の場合、年間で最大30,000ドル。
- 2024年、年間従業員1人の拠出額は最大23,000ドル。あなたが50歳以上の場合、年間で最大30,500ドル。
雇用主と従業員が合わせて拠出できる限度額(拠出総額は、従業員の年間報酬の 100% を超えてはいけません。)
- 2023年、年間個人拠出額は最大66,000ドル。あなたが50歳以上の場合、年間で最大73,500ドル。
- 2024年、年間個人拠出額は最大69,000ドル。あなたが50歳以上の場合、年間で最大76,500ドル。
Employer Matching
雇用主によるマッチング(employer matching)とは、あなたの年間拠出額に基づいて雇用主があなたの401(k)口座へ一定額を拠出することを意味します。マッチング拠出は法律で義務付けられていないため、すべての雇用主が提供しているわけではありません。 しかし、優秀な従業員に長く勤務してもらうために多くの企業が福利厚生の一環としてマッチング拠出を採用しています。
例①、従業員が拠出する最初の 6% の 50% を会社が拠出するとします。 あなたの年収が60,000ドルで、毎年401(k)に 6% を拠出することを選択した場合、あなたは3,600ドルを拠出することになります。従って、あなたの会社はその 50%、つまり 1,800ドルを拠出することになります。 あなたは給与からさらに拠出することもできますが、会社のマッチング限度額は1,800 ドルに制限されます。
例②、従業員が拠出する最初の 3% の 100% を会社が拠出するとします。 あなたの年収が60,000ドルで、毎年401(k)に 3% を拠出することを選択した場合、あなたは1,800ドルを拠出することになります。従って、あなたの会社はその 100%、つまり 1,800ドルを拠出することになります。
べスティングの条件
多くの企業は雇用主の拠出金が 100% 従業員へ権利移行するまでに一定の期間を設けます、これをVesting(ベスティング)と言います。 あなたが 401(k) に個人的に拠出したお金はあなたのものです。 ただし、あなたの会社の拠出金がすぐにあなたのものになるとは限りません。 多くの企業では、雇用者のマッチングが従業員へ 100% 権利移行するために、平均3年から5年間雇用される必要があります。これは雇用主から拠出して貰った従業員がすぐに退職することを防ぐためです。
例えば、あなたが会社に就職して2年後に辞めた場合、べスティング期間が 3 年あるとすると、雇用主からの拠出金は返金される可能性があります。または、会社のべスティング条件によっては、その拠出金の一部しか受け取ることができない場合もあります。
最低受給金額
Traditional とRoth 401(k)の両方の口座保有者は59½歳から給付金の引出しを開始することができます。特定の理由がない限り、早期引出し額には10%のペナルティが課せられますので注意が必要です。さらに、RMDルール(Required Minimum Distribution)と言われ、72歳からは口座の資産残高と平均余命に基づいて計算された給付額を受け取る必要があります。怠った場合はその給付額の50%に相当する税金ペナルティが発生する可能性があります。RMDルールは、口座保有者がまだ生きている間はRoth IRAには適用されません。 ただし、Roth 401(k)には RMDルールが適用されます。
ペナルティ
一般的に、59½歳より以前に401(k)口座から早期引き出しをした場合は、引出した金額は総所得に加えて(所得税課税対象)、さらに追加で引出した金額の10%のペナルティが課せられます。
ただし、下記の事項については早期引出しのペナルティの対象とはなりません。
- 401(k)口座保有者の死亡により、401(k)口座を相続して早期引出しした場合
- 障害者になった場合
- 健康保険に加入していない、または保険でカバーされない自己負担の医療費がある場合。調整後の総収入(Adjusted Gross Income (AGI))の10%を超える医療費にはペナルティが課せられません。
- 401(k)から数年間定期的に引き出しを行う必要がある場合。特定の要件を満たしていればペナルティなしで引き出しを行うことができます。
- 未払いの連邦税がある場合。IRSはあなたの401(k)を利用して税金を支払うことができます。
- Reserve(予備役部隊)が現役軍務に就いた場合
- 仕事を退職する場合 (55歳以降に退職した場合のみ)
IRAのペナルティの特例項目に似ていますが、異なる点としていくつか挙げます。401(k)では、特定の大学費用、「初めて」住宅を購入する場合(10,000ドルまで)、失業中に医療保険費を支払った場合、早期の引出しには10%のペナルティが発生します。IRAは発生しません。
それでも住宅購入の頭金が必要な場合は、10%違約金を覚悟するか、あなたの401K口座からローンをするオプションがあります。
転職時に401(k)はどうする?
下記のオプションから選択してください。
- 前の雇用主の401(k)で貯蓄を維持する
- 前の401(k)から新しい雇用主の401(k)にお金を移す
- 前の401(k) をIRAにロールオーバーする
- 前の401(k) を現金化する
401(k)とIRAの違い
401(k) と IRA の両方は長期的に貯蓄と投資を行うために使用できる税制上の優遇措置を備えた貯蓄口座です。さらに同時に両方の口座へ拠出することができます。 401(k) と IRA の主な違いは、 401(k) は雇用主が提供しますが、IRAは個人が 銀行または証券会社を介して口座を開設します。どちらも株式、債券、投資信託など、幅広い金融商品へ投資をすることできます。 一般的には、IRAの方がより多くの金融商品へ投資することができます。 401(k) は、年間でIRSより高い金額を拠出することができます。
401(k) | Traditional IRA | Roth IRA | |
加入資格 | 雇用主が401(k)を提供していること。従業員は12ヶ月の勤務を完了し、21 歳以上でなければならない。 | 課税対象の勤労所得がある。何歳でも可。2020年1月1日より以前は、70½歳以上の場合は拠出できませんでした。 | 課税対象の勤労所得がある。何歳でも可。 (ただし、所得制限あり) |
拠出額の所得控除 | Traditional 401(k)はあり。Roth 401(k)はなし。 | あり | なし |
拠出限度額 | 2024年、年間従業員拠出額は最大23,000ドル。50歳以上の場合、年間で最大30,500ドル。 | 2024年、年間個人拠出額は最大7,000ドル。50歳以上の場合、年間で最大8,000ドル。 (所得により拠出制限の変動あり) | 2024年、年間個人拠出額は最大7,000ドル。50歳以上の場合、年間で最大8,000ドル。 |
雇用主マッチング | あり | なし | なし |
拠出締切日 | 課税年度12月31日 | 課税年度の翌年4月15日 | 課税年度の翌年4月15日 |
受給開始時 | 引き出した拠出金と収益は課税対象。59 ½歳未満の場合は、例外を除いて、早期引き出しに対して追加で10%の税金を支払わなければならない場合がある。 | 引き出した拠出金と収益は課税対象。59 ½歳未満の場合は、例外を除いて、早期引き出しに対して追加で10%の税金を支払わなければならない場合がある。 | 収益は、最初の拠出から 5 年が経過していれば、非課税および違約金なしで引き出すことができる。59 ½歳未満の場合は、例外を除いて、早期引き出しに対して追加で10%の税金を支払わなければならない場合がある。 |
最低受給金額 | Traditional 401(k)、Roth 401(k)の両方とも72歳になる年の翌年4月1日までに、規定額の受給開始。それ以降の年は毎年12月31日まで。 | 72歳になる年の翌年4月1日までに、規定額の受給開始。それ以降の年は毎年12月31日まで。 | なし |
雇用主が401(k)を提供している場合は加入することをお勧めします。資金に余裕があれば同時にIRAにも拠出すると一層リタイアメント資金が充実するでしょう。
もし雇用主が401(k)を提供していない場合でも、IRA口座へ拠出することができます。さらに条件が合えば、Traditional IRAとRoth IRAの両方へ拠出することもできます。
まとめ
日本の民間企業の年金制度は確定給付企業年金(DB、厚生年金)がまだ根強く残っていますが、1980年代以降、アメリカでは、公務員以外の民間企業は企業型確定拠出年金(DC、401k)へ移行しています。
金融機関の調査によると雇用主の85%以上は401(k)を提供しており、そのうち90%以上は雇用主のマッチング拠出を提供しています。あなたの雇用主が401(k)を提供している場合は、あなたの拠出分と雇用主の拠出分を上手く貯蓄、投資し、老後の資金を育ててください。
さらに401(k)に加入しながら、個人年金のIRAに拠出することも可能です。老後を豊かに過ごすために税制優遇措置を上手く利用しながらソーシャルーセキュリティー(社会保障給付)、企業型確定拠出年金(DC、401k)、個人型確定拠出年金(IRA)へ積み立ててみてください。
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